「おっおっおっ……」
「おーラグナスおかえり。なんだ、内藤ホライゾンの物真似か?」


 買い物から帰ってきたら
 シャツとパンツ(もちろん下着のことだ)、なんて格好のシェゾが
 おれの部屋で、おれのタンスの中の


 おれのパンツを漁っていました。



おそろい!



「っぎゃああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!
 おん前ええぇぇぇぇなにやってんだあああぁぁぁ!!!!
 このドロボウ!! チカン!! ヘンタイ!!!!」
「俺は変態じゃねぇ!!!!」

 そこしかツッコまないのか。
 と頭のどこかから声がしたが、それを口に出す余裕なんてない。ツッコみはじめたら追いつかないからだ。
 こいつはどうしてこう意味の分からないことばっかりするんだろう。しかも今回は素みたいだし。今なんかトランクス振り回してるし。
 黙ってたら格好いいのに、どうして下着姿でタンス漁りなんかしちゃうんだろう。
 泣ける話だ。実に。




 よく見ると、シェゾの足元にはトランクスが二つに分けて重ねられている。
 すごく嫌な予感がする。そして、そういうおれの勘は大体当たるのがまた悲しい。


「昨日パンツ穿いたら小さくてな、よく見たらお前のだったんだよ」
「……はぁ?」
「俺とお前は柄が同じやつが多いだろ? こういう白と水色の縞柄とか。
 だからこうやって、間違ってないかどうか俺がわざわざ調べてやってんだよ」
「……………………」


 なんだろう。ツッコミ待ちなんだろうか。
 そんなの「間違えてお前のパンツ穿いてた」って後から口で言えばいいだけじゃないか。おれだってそのくらいは許すよさすがに。
 あとなんで上から目線なんだよ。誰もパンツの分別頼んでないよ。
 けれど、そう叫ぶ気力が急速に抜け落ちていく。
 これって何の魔導だろう。ブレインダムドというよりは、るいぱんこ?


「しかしお前、相変わらず腰回り細いな。食っても食っても護符に吸われてるよなぁ。
 俺もお前の穿いてることだし、試しにお前も俺の穿いてみろよ。
 それはそれで面白そうだ」
「……ん?」


 今なんか、引っかかるフレーズがあったような……?


「お前が今穿いてるパンツ、誰のだって……?」
「は? だからお前のだって言っただろう。話聞いてんのか」


 うわぁ……
 これは、一体、どうしたらいいんだろう。さすがに引いたよ……
 ……何でおれ、こいつのこと好きなんだっけ……?


「もしかして、昨日の夜からそのままか……?」
「いや、これはどっちのか調べるために今穿いたモンだ」


 ああ、時の女神様……ッ!!


「余計悪いんだよおおおおぉぉぉぉぉッッッ!!!!!!」


 鳩尾に三発、顎に一発。
 きれいに決まって宙に浮いたシェゾは、その後しばらく起き上がってこなかった。


 これからは、こいつと違うパンツを買おう。そう固く決心した日だった。