「――まったく、いい眺めだな」
小さく呟いてしかいないのに耳に入ったらしく、ラグナスは呆け切っていた顔に表情を取り戻し、俺を睨みつけた。
おやおや、まだそんな気力が残っていたか。しかし、
「そんな格好で睨まれても、可愛いだけだが?
なあ、後ろにローター銜え込んでミニスカートからおっ立てたモン見せ付けてくれてる、イカしたカウガールさん?」カウガール
事の発端は、例の乗馬マシンだ。
ラグナスはアレを物置に封印しただけでは飽き足らず、なんとあのかしまし娘どもに譲渡する約束を、俺に何も言わず取り付けてきたのである。
「誰も使わないんだから別にいいじゃないか」
「ふざけるな! アレは俺がお前のために買ってきたもんだぞ?! それを勝手に……」
「だったらなおさら、役に立ててくれる人のところにあった方がいいね」
一体全体、人の厚意を何だと思っているのか!
実際、アレに乗ったお前の素晴らしかったことといったら。殊に仰け反って上を向いた首筋は大変センシュアルで、かぶりつきたくなるものだった。そもそも足を開いて何かに跨るという行為の価値自体をこいつは理解していない。あれから散々言い聞かせたにもかかわらず聞き入れられなかったが、その結果がこうか……。
だったらこちらにも考えというものがある。
「……分かった。そこまで言うならあいつらにやることを認めよう。しかしあれは俺の金で買ったものだ。条件を一つ出させもらう」
「……それもしょうがないな。うん、いいよ。条件って何だ?」
「簡単だ。俺の指示に従いながら、最後にもう一度、
お前がアレに乗ることだ」
馬鹿、自分でいいって言っただろうが。今更そんな顔しても遅いんだよ。
こうしてラグナスは、ゆらゆらラストライディングを愉しんでいるというわけだ。西部劇にはかえって出てきそうもない、コテコテの格好をして。
頭にはテンガロンハット、足にはウエスタンブーツ、太ももにはホルスター。ぴったりとした丈の短いシャツとベストだからへそがよく見える。足が大きく開かれた所為で元から超ミニのスカートは更に上へと捲れ、女性物の下着につつまれたラグナスの陰部を隠す機能を果たせていない。そしてその下着も面積が狭すぎて、膨張したソレは布地から飛び出してしまっていた。先端から滴る先走りがよく見えて仕方がないな。自分で扱いて出したいだろうが、あいにく俺は後ろで縛った腕を解放してやる気は毛頭ない。意向の合致がみられず残念だな。
アナルのローターもその体勢じゃ自力で抜けやしないだろう。今日入れたのは長めのだし、バランスの取りづらいその上で前傾姿勢なんか取ったら、腹に力が入って余計締め付けちまうもんな?
最初「なんでここまで」と騒いでいた口は早々にテープで塞いでしまった。しかし……「なんで」だと? 俺に言わせれば、一人でこっそりナース服なんか着てるお前の方がよっぽど「なんで」に値する。まあ、趣味は人それぞれだ。俺はお前を否定する気なんぞないから安心しろ。こうして利用する気は満々にしてもな。
マシンの揺れは最大に、逆にローターの振動を最弱にしてしばらくすると、ラグナスは不本意そうに、けれど熱を孕んだもどかしそうな目でこちらをちらちら見始めた。そうだよな、これくらいじゃ全然物足りないよな。
「どうしてほしい?」
口を塞いで答えられないことは承知の上だ。だがこいつは物理的障害がなかろうと返答できやしない。今もこうやって見る間に赤くなり、物欲しそうな目をしてしまった自分をやっと知覚・認識し、恥らっている。何を考えるかなんて筒抜けだ。俺がそういう風にさせたんだから。
「せっかくこんな格好で勃起して、あまつ前からダラダラ垂らしてんだ。
ローターだけでイケるか、試してみるか?」
マシンの揺れも最小にし、口のテープを剥がす。ゆっくりと首筋を舐め上げればぎゅっと目を瞑り、けれど快感に耐え切れずびくんびくんと震えて……ああ、また締め付けちまったか? 謝るから泣くなよ。
けれどラグナスは小さく首を振り、俺の胸に顔を押し付けながら
「や、シェゾ……。もっ、さわっ、て……っ」
恥ずかしそうに、しかも可愛くおねだりしてきやがった。
「きちんと言えたいい子には、ちゃんと応えてやらないといけないな」
そう言って頭を撫でてやると、ラグナスはほうっと笑顔を見せた。その表情に酷く満足感を覚えながら、額のバンダナを外す。不思議そうな顔をしてこちらを見るラグナスの目をそれで覆い、身体の線を辿るように頬から首へ、首から肩へ、ゆっくりと手を下ろしていく。
「あ、ふあっ!」
見えないから愉しいだろう?
露わになっている腰と太ももをそろりと撫でつつ、顔はシャツの前へ。革のベストとの間を覗けば、存在を主張するようにぷつんと突起したものがある。そこに舌を当てた途端、
「ひゃあああぁぁん!!!」
声にならない悲鳴がラグナスの口から溢れた。本当に乳首が大好きになったな。悦んで頂けると俺としても嬉しい限りだ。舐めて捏ねて吸って咬んでを繰り返していれば、もう片方のおねだりもちゃんとできる。開発した甲斐があったというものだな。ご褒美にキスをやろう。心配するな、ココもちゃんと弄り続けてやる。
涙と涎とガマン汁をダラダラ垂らしながら喘ぐラグナスは、どうにも官能的で目のやり場に困る。注視すべき所が多すぎて追いつかないな、どうしたものか。
頭の中でくだらない言葉遊びに興じていると、ラグナスが再び俺の肩口へ顔を寄せた。視界のない中、回らない舌で最後の願いを言う。
「シェゾ……! も、イきた……ぁんッ!」
はい、よくできました。
俺は胸を弄っていた手を涙で濡れたラグナスの頬に当てた。上を向かせ、深く深く口付ける。懸命に応えたラグナスのほころんだ唇といったら!
解放への期待と興奮を抑え切れないその耳元に口を寄せ、小さな声で言ってやる。
「じゃあ、乳首とローターだけでイってみような?」
トロトロになった頭が意味を理解するより早く、マシンとローターの振動を一番強いものにしてしまう。ラグナスが抗議のために吸い込んだ息はほとんど嬌声の体を、けれど少しの失望を含んで部屋に響いた。
「ゃああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!」
約束通り小さな粒を弄り続けるが、ラグナスは力が入らず姿勢が維持できないようで大変やりづらい。この上なく残念なのだが、外すしかないか。いやだいやだと悲しそうに俺の名を呼び続ける唇を、俺のそれで塞ぎながら腕の拘束を解く。するとそれは自身を解放するのでも、視界を手に入れるのでもなく、二本とも俺の肩と首へ回された。それもまた、身体を支えるためではないのだろう。
おいおい、お前はどこまでも可愛いから困るな。――俺の負けだ。本当はもっと苛めてやりたかったんだが、ここまでされたら仕方がない。
手は胸のまま、俺は顔をスカートへ近づけて舌を出す。マシンの軌道はランダムで当てに行くのは面倒だ、エンカウントを待たせてもらう。少しだけ我慢しろよ。
そうしてぐらぐらと大きく揺らされるラグナスの、限界まで張り詰めたその先端が舌と触れた瞬間、
「あああぁぁぁ――――――ッッッ!!!!!!」
白濁色の液体が勢いよく出された。俺の顔へ向けて。
ああ、折角服やら何やらに掛けさせるつもりだったのに、つい忘れちまったな……。
唇に掛かった分を舐め取り、反省しながらマシンのスイッチを切る。ラグナスは少しの間射精感にびくびくと震えていたが、それが収まるとくなくなと俺へ寄りかかってきた。しかし脱力しても気になるものは気になるらしく、俺の腕を取ると自分の背へ回し、まずローターを取れと意思表示した。流石だな。
目隠しのバンダナを取ると、涙を吸って色が変わり重くなっていた。ついでに精液のかかった顔も拭いておく。今日は全部舐めとるのは面倒なんだ、許せよ。早くお前に構いたい。ラグナスはなおも目尻から水滴を流すので舐め取ってやる。
「シェゾ、ひど……!」
「ごめんな。でも後ろだけでイケそうだっただろう?」
「ばか!!!」
力の入らない腕でぽかぽかと殴られたが、抱きしめてやるとすぐに収まってくれた。
ラグナスはマシンから降りる力も入らず、俺が抱きかかえなければならなかった。あれだけ善がってたら相当疲れるだろう。それでも俺の首にぎゅっと抱きつき、ぽつぽつ言う。
「もうあれやだ」
「お前がよそへやっちまうからもうできないだろうが」
「うるさい。ちがう……」
後半は辛うじて聞き取れた小さな声だったが、どういう意味だろうか。結論に至る間もなく、ラグナスはむすっとした顔を上げる。睨むような、けれど力の入っていない上目使いで俺を見ると、
「『お前が乗るのは俺だけだ』とか言ってたくせに」
とんだ爆弾発言をしてくれた。俺は不覚にも絶句――そう、完全に言葉を失ってしまった。
おい、今何て言った? この口が言ったのか? 意味分かって使ってんのか?
ラグナスは少しの間じとりと俺を睨んできたが、拗ねるようにまた顔を下げてしまった。耳が真っ赤なのがとてもよく見える。
「……じゃあ、乗ってくれるのか?」
「…………足疲れるから乗るのはやだ」
スン、と鼻を鳴らしてひどく聞き取りにくい声が返ってきた。
「でも、そうじゃないなら、……いい」
――おやおや、今日は随分と積極的に言えるもんだ。
ではご要望の通り、おみ足にご負担を掛けないように致しましょうか。
俺のカウガールさん?
* * *
――数日後。ラグナスは本当にマシンをあのかしまし娘に渡してしまった。
「お前、自分の精液まみれのシートに女が乗るってのによく渡したな。臭い取れたのか? そうか、そういう趣味か」
「うるっさいッ!!!」
回し蹴りが繰り出されたが、照れ隠し程度なら楽にかわせるな。
「お前がッ! あんなコトさせるから悪いんだろ?! シートも布製じゃないからそんなシミにはならなかったし、ちゃんと拭いたし臭いも取れましたッ!! 何よりおれはもうアレに乗りたくなかったんだよ!!!」
「随分な嫌われようだな」
「当たり前ッ、だぁ――――――ッッ!!!!!」
この後、壮絶な家庭内無制限バトルが繰り広げられたのだがその詳細は割愛する。犬も食わんというものだ。
俺はオモチャの一つが減って残念ではあったが、最後に効果的に使えた点とまた新しい遊びを思いついた点から、総合的には満足していた。
さて、今度はどんな服を着せようか?
乗馬シリーズ終了。しかしシェゾがコスプレに目覚めました。
表のはこれが書きたいが為のイントロダクションだったという…
ちょっとシェゾ視点で書いたらこっちが引くくらいにラブラブになりました。
ちなみにラグナスは「シェゾでイきたかったのに」と怒っていますが、絶対に教えてあげません。