下から腰がガンガンと送り出される。
 その一撃一撃が《イイところ》を突いていて、ラグナスは力が入らず足をふらふらとさせながらもタイミングを合わせて腰を振った。
 シェゾの、腹の上で。

 一際大きいストロークで突き上げられる。
「やっ、あ、んッ!」
「…………ッ!!」
 身体の中でそれがびくりと大きくなる瞬間強く前を擦られ、ラグナスも果てた。頭が真っ白くなる中、シェゾがなおもびくりびくりと吐精したのが分かった。 腹の筋肉がびくびく収縮しているからなおのこと鮮明に感じられる。その感触がまたよくて、シェゾの腹の上にぼたぼたと白濁をこぼした。
 けれど頭は自分ひとりで処理したときよりは遅いけれども、はっきりとした意識を取り戻し始めていた。いつもはまだぼんやりと、津波のような快楽に溺れ回復できないはずなのに。
(……運動不足なのかな。きちんとストレッチしなかったっけ……)
 普段くらいの緩慢さを心がけながら、己の首筋に触れる。いつもほど熱中できなかったことが、いまだ倦怠感の中にいる愛しい人に対して申し訳なかった。
(なんで……首、攣っちゃったんだろう……)

悪戯


 今日は少し強引にベッドに押し倒された。ベッド付近に立っている状態から、まるでフットボールを敵陣内でパスされた選手がそのままコールラインへトライする姿勢さながらだった気がする。
 あまりにも不意の出来事で、受身の姿勢はとりあえず取ろうとしたのだが自由が利かない。しかも最近本を読んでいて少しばかりトレーニングがおざなりになっていたのも運が悪かった。
 ――ぴきっ
「ひィ……ッッ!!」
 ラグナスにしか聞こえない何とも不吉な音を立てて、首の筋が攣ったのだ。
 その後は言葉の綾でもなく本当にシェゾにされるがままで、どうしたら首に負担がかからないかばかり考えながら愛撫され、慣らしを受け、挿入され……
 首が攣ったなんて体が資本の剣士が恥ずかしくて言えるわけがないし、かといって普段通りに嫌がったらシェゾのこと、どうせもっと《いじわるなこと》をするに違いない。だからついそのまま打開策もなく、状況に甘んじてしまった。
 しかし段々痛みも軽減してきてホッとしてきたところ、腰に手を回され起き上がらされたのには驚いた。そしてそのまま、騎上位に突入……。
 幸い首が痛くならないような動き方は偶然すぐにできたので、こんちくしょうとばかりに締め付けてやった。それが功を奏したのかはたまた二人で溜まっていたのか、あまり時間がかからずフィニッシュを迎えることができた。


(よかった……こんなところで死にたくないよ……)
 首を攣って死ぬ人がいるかどうかラグナスはよく知らなかったが、ちょっとした死の恐怖を味わいかけたのは本当だった。
 だって相手シェゾだし。こいつ手加減知らないし。
 少々上の空だったことを申し訳なく思いながら痛みのないようにゆっくりと下を見ると、シェゾは枕に頭を預けてぐったりと目を瞑っていた。どうやらこちらの孤独な攻防には気付かれなかったようだ。
 ほっと安堵しながらその身体を眺める。一応は魔導師のくせに自分より筋肉がついていてすらっとしてきれいで、真っ白い肌をしている。
(きれいだな……)
 それが馬鹿みたいだけど率直な感想で、今更ながらラグナスは一人で顔を赤くした。
 じっと観察していると、両胸の突起が気になった。
 いつもは自分が弄られるそれ。触れられたり舐められたりすると気持ちよくて、恥ずかしい声が抑えられない二つの釦。
 ――シェゾはどうなんだろう?
 ――知らないな、触ったことないし。
 ――シェゾも気持ちいいのかな。
 ――試してみようかな。
 前傾姿勢をとると両手をその突起の上にかざし、
 かりっと引っかいた。

「ッ?!」
「ッ!!」

 シェゾはびくりと腰を浮かせるほど反応した。そのとき一緒に身体の中のものも大きくなって、ラグナスはその感触に驚かされる。
「ひゃたぁぅッ……」
 反射で背を反らせてしまい首に痛みが走った。そろそろと患部に配慮しながらゆっくりと視点を下へ戻せば、そこには怒気をはらんだ二つの青い瞳があった。竦む。
「お前……、こんな悪戯をするとは、まだまだ足りないらしいな……」
「ひいッ!」
 怖い。すっごいこわい。たすけて。目が。目が。目が。
「安心しろ。まだ終わらすつもりはないからな……」
「ひゃぅッ!!」
 身体の中でシェゾのものがまた大きくなり始めた。その感覚に内壁が反応して、きゅっと収縮してしまう。
「やぁ……ッ」
「ここが弄られ足りなかったか……。そうかそりゃ悪かったな。今度はたっぷり満足させてやるよ……」
「あんッ」
 仕返しというよりは復讐のように、胸の釦をきつく摘まれて思わず嬌声が上がった。
 けれどシェゾを見れば完全《お仕置きモード》の顔で、やっぱり歯がガタガタという。
(ああオレ、明日お日様が見られるかな……)
 ラグナスは明日の無事を小さく祈るのだった。




いじめっこにはかなわないのでした。