控えめに言って、シェゾの触り方はねちっこい。
 例えるなら、納豆とオクラととろろとメカブを一緒にかき混ぜてはしが重いとまで感じる、あの粘度。つまり「ねばっこい」レベルだ。絡め取られたら最後、恐ろしくしつこい。
 そう、昔……泣くまで乳首だけいじられた、とか……そういう……。
 とにかく陰湿としか言いようがないのだ。


おねだり


 情けないことに、おれは今日も今日とてシェゾに捕まっている。
 後ろから抱きかかえられ膝の上に乗せられて、首やら尻やら弱いところを散々ねちねち撫でられ揉まれ……。すっかりあいつのペースに乗せられてしまった。
 けれど、触れられたいところにはちっとも指がこない。
 正直なところ、焦れている。
 今も胸や腹の筋肉を服の上からなぞるだけで、肝心の、泣くまで弄ったそこには触れてくる気配がない。もう服の上から見ても分かるほどそれは突起していて、布が擦れる感触すらもどかしいのに。
 小さく「シェゾ、」と名前を呼んでみるけれど、返ってくるのは「んー」という気のない返事だけ。悔しくて後ろから回された青い袖を力いっぱい掴んでやる。
「ぅ〜」
「何だ? 離してほしいか?」
「!」
 そんなことをちっとも考えていなかった自分に驚いた。はしたないことしか頭にないのだと気付き、顔に血が集まる。
「何か言いたいことがあるなら、ちゃんと口で言え?」
 そんなことをしたら恥ずかしすぎて死んでしまう。できるわけがない。
 抗議の意思表示に身をよじって後ろを睨みつけた。でもそこにあるのは、憎らしいほど意地の悪い笑顔だけ。
(分かってるくせに……!)
 頭が、目の前が熱くなる。衝動に任せ、掴んでいた青い手首をぐいと引き寄せて、指をそこへ当てさせた。
 ちりり。
「ひあァッ!」
 待ちに待ったその熱さはまるで肌の上を何かが爆ぜるようで、思わず高い声が上がった。
 その熱は頚動脈を通り、頭の中でぐわんぐわんと膨張し鳴り響く。反響してもっともっとという声に変わっていく。
 振り返るときに熱のかけらが目尻からこぼれた。
 シェゾの目はさっきよりも優しくて、一つ「ラグナス」とおれを呼ぶ。そして口だけの動きで聞いた。
(もっと?)
「もっと……!」
 つられて声が出てしまった。恥ずかしい。
 でもシェゾは「真っ赤だ」といらないことを言いながらも、おれの目尻にキスをくれた。
「リクエストされたら、応えないとな?」
 耳元での擦れた声は、特別に色っぽい。
 舌を絡ませながら、また熱が頭に響くのを心地よいと感じた。